歯根破折とは?症状・原因・治療方法を歯科医師が解説
公開日:2026年8月26日 | 最終更新日:2026年8月26日
「噛むと歯が痛い」「同じ場所の歯ぐきが何度も腫れる」という場合、歯の根にひびが入る歯根破折(しこんはせつ)が原因になっていることがあります。歯根破折は外から見ただけでは分かりにくく、初期には症状がはっきりしない場合もあります。この記事では、歯根破折の症状・原因・検査方法・治療方法・抜歯になる場合・歯を残せる可能性について、患者さん向けにわかりやすく解説します。
歯根破折とは?
結論:
歯根破折とは、歯ぐきや顎の骨の中にある「歯の根」にひびが入ったり、割れたりした状態です。
歯は、歯ぐきの上に見えている「歯冠」と、歯ぐきや顎の骨の中にある「歯根」に分けられます。歯根破折は、この歯根部分にひびや割れが生じた状態です。
特に歯の長い方向に沿って割れる状態は、垂直性歯根破折(Vertical Root Fracture:VRF)と呼ばれます。

正常な歯と、歯根にひびや破折線が生じた歯の違いを示した図です。
破折線の隙間へ細菌が入り込むと、歯の周囲に炎症が起こり、歯ぐきの腫れや膿、顎の骨の吸収につながることがあります。
歯根破折は初期に気づきにくいことがあります。
痛みが一時的に治まった場合でも、割れた部分が自然に元へ戻ったとは限りません。同じ歯の周囲が繰り返し腫れる場合は、歯科医院で原因を確認することが大切です。
歯根破折ではどのような症状が出ますか?
結論:
歯根破折では、噛んだときの痛み、繰り返す歯ぐきの腫れ、膿、歯の揺れなどが現れる場合があります。一方、初期にはほとんど症状がない場合もあります。

歯根破折では、噛んだときの痛みや歯ぐきの腫れなどがみられる場合があります。
噛むと痛い
食事中に噛んだときや、噛んだ力を緩めた瞬間に痛みを感じることがあります。
歯ぐきが腫れる
同じ場所の歯ぐきが何度も腫れたり、押すと違和感が出たりすることがあります。
膿の出口ができる
歯ぐきに小さなできもののような膿の出口ができ、治ったり再発したりすることがあります。
歯が揺れる
周囲の骨や歯周組織への炎症が進むと、歯の動揺を感じる場合があります。
これらの症状は、むし歯、根の先の炎症、歯周病、噛み合わせの負担などでも生じます。症状だけで歯根破折と判断することはできません。
歯根破折の主な原因は何ですか?
結論:
歯根破折には、歯ぎしり・食いしばり、硬い物を噛むこと、残っている歯質の量、土台や被せ物に関係する負担、外傷など複数の要因が関係する場合があります。

歯根破折には、歯に加わる力や残っている歯質の量など複数の要因が関係します。
1.歯ぎしり・食いしばり
強い力が繰り返しかかると、歯へ少しずつ負担が蓄積し、ひびや破折につながる可能性があります。
2.硬い物を噛んだ
氷、硬いせんべい、骨、種などを強く噛んだことをきっかけに、歯が割れる場合があります。
3.残っている歯質が少ない
大きなむし歯や繰り返しの治療によって歯質が少なくなると、噛む力に耐えにくくなることがあります。
4.歯の土台や被せ物に関係する負担
歯の状態や土台の形、残っている歯質、噛み合わせなどによっては、歯根へ力が集中することがあります。
5.転倒・事故などの外傷
転倒、衝突、スポーツ、交通事故などで歯へ強い衝撃が加わり、歯根が破折する場合があります。
「神経を取った歯だから必ず割れる」というわけではありません。
神経を取ったことだけが破折の原因になるわけではありません。残っている歯質の量、修復方法、噛み合わせ、歯ぎしりなど複数の要因を総合的に評価する必要があります。
歯根破折はどのように診断しますか?
結論:
歯根破折は一つの検査だけでは診断が難しい場合があり、症状、口腔内診査、歯周ポケット、X線、必要に応じて歯科用CTやマイクロスコープなどを組み合わせて評価します。

歯根破折は、デンタルX線、歯科用CT、マイクロスコープなどを組み合わせて評価する場合があります。
歯根破折は、破折線の位置や方向によっては、一度の検査で診断を確定できないことがあります。当院では症状と検査結果を総合して判断します。
1.症状と経過の確認
いつから痛むか、何を噛むと痛むか、過去の治療歴、腫れを繰り返しているかなどを確認します。
2.口腔内診査
歯ぐきの腫れ、膿の出口、被せ物の状態、歯の揺れ、噛み合わせなどを確認します。
3.歯周ポケット検査
歯の一部分だけに深い歯周ポケットがある場合、歯根破折を疑う手がかりになることがあります。
4.打診・咬合検査
歯を軽くたたいたときの反応や、噛んだときの痛みの出方を確認します。
5.デンタルX線検査
歯根周囲の骨の変化や根の先の状態を確認します。ただし、破折線が写らない場合もあります。
6.歯科用CT検査
必要に応じて、歯根周囲の骨の状態を三次元的に確認します。
7.マイクロスコープによる確認
必要な場合は、拡大視野で歯の内部や歯根表面の破折線を確認します。
レントゲンに写らなければ、歯根破折ではない?
レントゲンに写らない歯根破折もあります。破折線の方向、ひびの幅、周囲の骨の状態によっては、通常のレントゲンで確認できないことがあります。そのため、診察所見、歯周ポケット、X線、CT、マイクロスコープなどを組み合わせて評価します。
歯根破折の治療方法
結論:
歯根破折の治療方法は一つではなく、破折位置、感染や骨吸収の範囲、残っている歯質、歯根の本数などを確認して治療方針を検討します。
治療方針を決める際には、次のような条件を確認します。
- 前歯・小臼歯・大臼歯のどの歯か
- 歯根の本数
- 破折した位置と方向
- 破折線の長さ
- 感染や骨吸収の範囲
- 残っている健康な歯質の量
- 歯周病の状態
- 噛み合わせや歯ぎしりの有無
- 治療後に歯を支えられるか
経過観察・負担の軽減
診断が確定していない場合や、状態に応じて噛み合わせを調整しながら経過を確認する場合があります。
破折した根だけを除去
複数の歯根を持つ奥歯では、状態によって破折した歯根だけを除去し、残りの部分を保存できる場合があります。
保存的治療
破折位置や周囲組織の状態など一定の条件がそろう場合、接着などを利用した保存的治療を検討できることがあります。
抜歯
破折が広範囲に及ぶ場合や、感染・骨吸収が進んでいる場合、保存後の安定が見込めない場合に検討します。
保存的治療には適応条件があります。
すべての歯に行えるわけではなく、保存できた場合でもその後の定期的な確認が必要です。
歯根破折の治療方法を比較
| 治療方法 | 検討される状態 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 経過観察・負担の軽減 | 診断が確定していない場合など | 歯の状態を確認しながら方針を検討できます | 定期的な確認が必要です |
| 破折した根だけを除去 | 複数の歯根があり、残せる根がある場合 | 歯全体を抜かずに済む可能性があります | すべての歯に適応できるわけではありません |
| 保存的治療 | 破折位置や周囲組織など一定の条件がそろう場合 | 歯を保存できる可能性があります | 適応条件があり、その後の定期管理が必要です |
| 抜歯 | 破折が広範囲、感染や骨吸収が進行している場合など | 感染源を除去できます | 抜歯後の欠損部に対する治療を検討する場合があります |
※治療方法は患者さんごとの状態によって異なります。
歯根破折になると必ず抜歯ですか?
結論:
歯根破折だからといって、必ず歯全体を抜歯するとは限りません。歯の種類、割れた場所、感染の広がりなどによっては、歯の一部を残せる可能性があります。
例えば、複数の根を持つ大臼歯では、破折した根だけを除去し、健康な根を残せる場合があります。
また、条件によっては保存的治療が検討されることもあります。
一方で、単根歯の深い位置まで割れている場合や、破折線に沿って感染と骨吸収が広がっている場合には、抜歯が必要になる可能性が高くなります。
最終的な判断は、画像だけではなく、お口全体の状態や患者さんのご希望も含めて行います。
歯根破折を予防するために大切なこと
結論:
歯根破折のリスクを減らすためには、硬い物を無理に噛まないこと、歯ぎしり・食いしばりへの対策、むし歯の早期発見、治療した歯の定期的な管理が大切です。

歯根破折のリスクを減らすためには、定期管理、セルフケア、噛み合わせの確認などを継続することが大切です。
硬い物を無理に噛まない
氷や非常に硬い食品を習慣的に噛むことは避けましょう。特に大きな詰め物や被せ物が入っている歯は注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばりへの対策
就寝中の歯ぎしりが疑われる場合には、お口の状態に応じてナイトガードを検討することがあります。
むし歯を早期に発見する
むし歯が大きくなるほど、治療で削る歯質も増えやすくなります。定期管理によって、できるだけ早い段階で異常を発見することが大切です。
治療した歯も定期的に確認する
痛みがなくても、被せ物、噛み合わせ、歯ぐき、レントゲン所見などを定期的に確認しましょう。
違和感を放置しない
「硬い物を噛んでから痛い」「同じ歯ぐきが何度も腫れる」などの変化がある場合は、早めに歯科医院へご相談ください。
歯根破折が疑われる場合の受診の目安
結論:
噛んだときの痛みや同じ場所の歯ぐきの腫れを繰り返す場合は、症状だけで自己判断せず、歯科医院で原因を確認することが大切です。
次のような症状がある場合はご相談ください。
- 噛んだときに特定の歯が痛む
- 噛む力を抜いた瞬間に痛む
- 同じ場所の歯ぐきが繰り返し腫れる
- 歯ぐきに膿の出口のようなできものがある
- 根管治療を受けた歯が再び痛み始めた
- 被せ物が入っている歯に違和感がある
- 歯が以前より揺れる
- 硬い物を噛んでから痛みが続いている
顔の腫れ・発熱・強い痛みがある場合
感染が広がっている可能性があります。我慢せず、できるだけ早く歯科医療機関へご連絡ください。
歯根破折についてよくある質問
歯の痛みや歯ぐきの腫れをご相談ください
歯根破折は、外から見ただけでは判断が難しいことがあります。噛んだときの痛みや繰り返す歯ぐきの腫れがある場合は、早めの検査をご検討ください。
中央歯科クリニック
医療情報について
本記事は、歯根破折について一般的な情報を提供することを目的としています。実際の診断や治療方法は、患者さんのお口の状態によって異なります。本記事だけで自己判断せず、歯科医師の診察を受けてください。
参考情報
- 日本歯内療法学会雑誌「垂直歯根破折の早期診断」
- 日本歯内療法学会雑誌「垂直性歯根破折歯の保存的治療について」
- American Association of Endodontists:Cracked Teeth and Vertical Root Fractures

