開咬
【 かいこう/オープンバイト 】

前歯に上下方向の隙間がある
開咬(かいこう)とは、奥歯はしっかり噛んでいるのに、上下の前歯部が噛まずに隙間がある状態のことを言います。いわゆるオープンバイトと呼ばれる状態です。
矯正歯科治療においては珍しくはない症例ですが、奥歯への負担が大きく将来的に患者さんの歯が残らなくなってしまう点では治すべき症例です。
原因とは
幼少期の指しゃぶりの癖
指しゃぶりなどの悪習癖と呼ばれる癖が5、6歳になっても取れなかった場合、その癖が原因で歯が動き、上下の前歯と前歯の間に隙間が出来てしまうと開咬になる可能性があります。そしてこれが続くと、奥歯だけで噛むことが増えるため負担が偏り、将来的に奥歯から順番に歯を失うことに繋がります。歯を長持ちさせるためには、バランスよく噛める状態にもっていくことが大切です。
前歯に隙間がある
上下の前歯の間に隙間があると無意識のうちにその隙間が気になり、舌で触ったり、押してしまう舌癖がつくことがあります。舌で前歯の内側を押してしまうと、徐々に時間をかけて歯が表側に開いていき、その隙間が大きくなると開咬になります。本来、舌は上顎先端のスポットという位置になくてはいけないのですが、ここが違うと歯並びに影響してきます。
遺伝的な要因
開咬の大きな原因のひとつとして、顎の形態も関わってきます。あごの骨が前下方に成長していくと、どうしても前歯同士が咬まなくなり開咬になりやすいのです。このような遺伝が要因の骨格性の場合は、家族の方も開咬である場合が多く見られるため注意が必要です。
将来的なデメリット
✖ ドライマウス・歯周病になりやすい
口が開いたような状態が続きますと、口が乾燥した状態いわゆるドライマウスになり、唾液の分泌量が低下してしまいます。
唾液の緩衝能(食べ物などにより口の中が酸性やアルカリ性に傾いても中和する性能)、抗菌作用が少なくなることから、細菌が増殖し、歯周病のリスクが上がり、結果として口臭発生の原因になります。また、常に口が開いていると口呼吸を誘発します。これによる健康へのリスクは大変大きく、二酸化炭素の濃度の変化による集中力の低下や、鼻を通さず流れ込む外気による扁桃腺肥大やアデノイド肥大などを招く原因にもなります。
✖ 歯の寿命が縮む
前歯でものを噛むことが出来なくなるため、食事をする時に奥歯のみで噛むことになります。そのため奥歯に無理な力がかかるようになり、開咬の方は臼歯から順に歯を失っていくことが多いのです。
歯を大切に長持ちさせたいと考えるなら、歯並びを綺麗に並べて、きちんとしたかみ合わせにすることによって、バランスのいい状態にし、歯を長持ちさせていくことが大きな価値となって来ます。また顎の関節にも負担が生じやすく、顎関節症を併発することもあります。
✖ 発音障害
上下の前歯が開いてしまっているため発音に影響が出やすく、舌っ足らずなしゃべり方になってしまうことがよくあります。
治療に使用する装置
マウスピース型矯正装置
開咬の治療には、透明で目立たないマウスピース矯正が適応できる症例が多いです。通常のワイヤーを使った表側矯正(マルチブラケット装置)やゴムメタルでは目立ってしまいますので、この方法は女性には特にお勧めです。当院ではこのマウスピースについて、インビザラインという装置を使用しております。全世界で700を超える治療例のある、信頼性の高い装置です。
マウスピース矯正の中には上下前歯だけの部分矯正もありますが、開咬の場合は上下顎全体の矯正が必要になるケースが多くなると思います。
また、開咬の治療には奥歯を喉の方に移動させる必要がある症状が多いです。その場合ワイヤー矯正ですと、歯科矯正用アンカースクリューといったチタン製の杭を骨に打ち込む矯正器具を使用し、それを軸にして歯を奥に引っ張る必要があります。しかしマウスピース矯正ではこのようなケースは少なくて済み、マウスピース単体で歯を移動させたり、歯に付ける目立たない顎間ゴムなどで対応できることも多いです。

※すべての開咬がこれらの治療法によって改善するとは限りません。場合によっては、歯の表面に装置をつけ、ワイヤーを用いる矯正装置で治療を行うこともあります。矯正の治療方法は個人の症例に応じて変更いたします。