子供のマウスピース矯正
お子様の歯並びのお悩みは、見た目だけでなく、口呼吸や舌の癖など、日頃の習慣に起因していることが少なくありません。中央歯科クリニックでは、これらの根本原因にアプローチし、お子様の健やかな成長をサポートするために、様々なマウスピース型矯正装置を用いた治療をご提案しています。

歯並びが悪くなる本当の原因とは?
かつて、歯並びの乱れは「大きな歯と小さな顎のアンバランス」や「遺伝」によるものと考えられ、治療が後回しにされたり、永久歯の抜歯が一般的でした。しかし、近年の研究により、その真の原因は口呼吸、舌の癖、異常な飲み込み方(嚥下)といった筋肉機能の不正が顎の発育不良を招いていることが明らかになっています。

- 口呼吸 :口が開いていると、舌は本来あるべき上顎の位置から下顎に落ちてしまいます。 この誤った舌の位置が口呼吸や逆嚥下を引き起こし、歯並びを悪くする原因となります。
- 間違った嚥下(飲み込み方) :飲み込む際に舌が前に突き出たり、口の周りに力が入る「逆嚥下」は、間違った飲み込み方です。 舌や唇には非常に強い力があるため、この間違った嚥下を繰り返すことで歯並びに悪影響を及ぼします。 正しい嚥下は、舌が上顎に吸い上がったままで口を閉じ、口周りの筋肉が動かない飲み方です。
- 指しゃぶり・態癖(たいへき) :指しゃぶりや頬杖、片側だけで食べ物を噛む癖、また横向きやうつ伏せ寝などの「態癖」も、顎と顔の正常な発育を妨げる要因となります。
マウスピース矯正(MRCトレーナー矯正)の大きな3つの特徴
MRCトレーナー矯正は、歯並びの根本原因にアプローチし、お子様の健やかな成長をサポートする治療法です。
- 永久歯の抜歯はしません!
- ブラケット(歯の表面に接着する装置)を使用しません!
- 治療終了後の保定装置は基本的に使用しません! そして、結果としてお子様本来の元気な顔立ちへと導きます!
MRCトレーナー矯正における注意点(できないケース)
MRCトレーナー矯正は、お子様とご家族の協力が不可欠な治療です。以下の4つの条件が満たせない場合は、治療が難しいことがあります。
- お子様自身の「治したい」という強い意思があること! (そのため、治療開始の適正時期は6〜7歳頃です。)
- 日中1時間、就寝中にトレーナーを装着できること!
- 1日5分程度のアクティビティ(口腔筋機能訓練)を行えること!
- ご家族皆様の協力が得られること!
MRCトレーナー矯正の3つのプログラム
MRCトレーナー矯正は、単に装置を装着するだけでなく、お子様自身の努力とご家族のサポートが一体となったプログラムです。
- トレーナー :日中1時間と就寝中のトレーナー(マウスピース型装置)装着が必要です。
- アクティビティ :姿勢、呼吸、嚥下(飲み込み)といった口周りの筋肉機能の訓練を、毎日5分程度行う必要があります。 このアクティビティをきちんと行った日は、MRC専用ファイルにシールを貼って記録します。
- BWS(歯列拡大装置) :歯列を拡大する装置ですが、お子様の状態によっては他の装置を使用したり、ごく少数ですが装置を使用しない場合もあります。
なぜトレーナーとアクティビティを併用するのか?
「トレーナーを口に入れていれば自然に歯並びが良くなる」と誤解されがちですが、それだけでは効果は限定的です。 トレーナー単独では、鼻呼吸、正しい舌の位置、正しい嚥下といった口腔機能の改善を完全に身につけることは難しいのです。
これまでの間違った筋肉の位置や使い方を改善し、鼻呼吸を習得することで、結果として美しい歯並びが得られます。 筋肉は怠けやすく、毎日正しい位置や使い方を練習しなければ、すぐに元の間違った使い方に戻ってしまいます。 ピアノのレッスンと同様に、毎日練習(アクティビティ)を続けることが、正しい習慣を身につけるために不可欠です。
呼吸プログラム
歯並びを悪くする最大の原因とも言われる「口呼吸」を「鼻呼吸」に一日も早く切り替えるため、中央歯科クリニックではMRC導入初期の段階から「呼吸プログラム」を取り入れています。 「カプノトレーナー」という二酸化炭素濃度や呼吸数を測定する装置を使用し、様々な条件下で鼻呼吸にするトレーニングを行います。 当院では、MRC治療を受ける全てのお子様にこの呼吸プログラムを実施しています。
治療開始までの流れと治療期間
治療開始までのおおまかな流れ
治療期間
治療期間は約2年が目安ですが、お子様のがんばり次第で期間が短くなることもあります。 アクティビティがすべて終了し、その結果として歯並びが改善されたらいったん治療は終了となりますが、永久歯がある程度生えそろう中学1年生くらいまでは装置を装着していただくことを推奨しています。
ムーシールドについて
ムーシールドは、お子様の「受け口(反対咬合)」を改善するために特化したマウスピース型矯正装置です。 受け口とは、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている噛み合わせの状態を指します。

ムーシールドの目的と効果

主に就寝時に専用のマウスピースを装着することで、舌や口周りの筋肉の状態を整え、受け口を改善します。 3歳から治療が可能で、特に乳歯列期に治療を行うことで、顎骨の正常な成長発育を促し、正しい永久歯の成長も期待できます。 噛み合わせが逆のまま成長を続けると、下顎の骨が過剰に成長し、将来的に大きな問題となる可能性があるため、お子様の負担を軽減するためにも早期の改善が推奨されます。
ムーシールドは、歯の位置を直接的に矯正するというよりも、噛み合わせの改善、舌圧と口唇圧のバランスの改善、そして舌を正常な位置(何もしていない時に上顎に軽く触れる位置)に保つことを主な目的としています。 つまり、「歯並びを整える」のではなく、「お子様の顎の成長を利用して、舌の位置や顎のバランスを整えることで、歯の噛み合わせを正常な位置に導く」矯正治療なのです。
ムーシールドのポイント
ムーシールドのポイント
- 歯を抜かない矯正です。
- 主に就寝時にマウスピースを装着し、受け口を矯正します。
- 痛みはほとんどありません。
- マウスピース型なので、自由に取り外しができます。
ムーシールドのメリット
- 歯を抜いたり、外科治療を行ったりする必要がありません。
- 比較的費用が安価です。
- 食事時や人前に出る際に器具を外すことができます。
ムーシールドのデメリット
- 成長の過程で、改善した噛み合わせが後戻りしてしまうことがあります。
- 舌や口周りのトレーニングが治療効果に強く影響します。(お子様のご協力が不可欠です)
- 受け口(反対咬合)にしか効果がありません。
- 効果が出やすい時期が限られています。
ムーシールドの施術適齢期はいつごろ?
乳歯が全て生え揃う3歳頃から治療を開始できます。 幼児期に受け口の場合、「成長の過程で自然に治る可能性もあるから様子を見ましょう」と言われることがありますが、3歳児で受け口と診断された後に自然に治る確率は6.4%程度という報告もあり、ほとんどの場合自然には治りません。 そのため、反対咬合の兆候が見られる場合、中央歯科クリニックではムーシールドを用いた早期改善をお勧めしております。
具体的に何をするの?
専用マウスピースを主に就寝時に装着する自宅治療と、月1回の診察が主な治療内容です。
そもそも小児期の受け口の原因
小児期の受け口は、上唇の力が強く上顎の成長が悪い、下唇の力が弱い、舌が下の位置にあるため唾を飲み込むたびに下顎を前に押してしまう、噛み合わせがうまくいっていないなど、顔の筋肉や舌、唇の力の不調和が原因であることが多いです。
ムーシールドは必ず治る?
実績のある治療法であり、一定以上の効果は見込めます。 しかし、受け口に対して万能な治療というわけではなく、他の矯正装置との併用が必要なケースもあります。 また、一度治療が完了しても、成長が進む中で再治療が必要となるケースもあるため、治療終了後も異変の早期発見のために定期的な検診をおすすめしています。 女の子は15〜16歳頃、男の子は17〜18歳頃まで骨格が成長するため、成長期が終わるまでは定期検診を続けることが理想的です。
ムーシールドの矯正期間について
治療期間の目安は約1年です。 しかし、お子様がきちんと装置を装着できない場合、期間は長くなる可能性があります。 期間中は、1ヶ月に一度程度の頻度でご来院いただき、経過観察と調整を行います。
ムーシールドの費用の目安
専用のマウスピース代が110,000円(税込)です。
※診察代込み。別途、定期検診代として3,300円/月(税込)の調整費用がかかります。
ムーシールドのまとめ
- ムーシールドは、専用マウスピースで受け口(反対咬合)を矯正する治療法です。
- 症状により、他の矯正治療と併用することもあります。
- 正しい成長を促す効果があるため、早期の導入がおすすめです。
- 治療後の後戻りを防ぐため、経過観察(定期検診)が重要です。